la cuvée Madam Suzanne JOUETTE

彼女もまた波乱万丈な時代を走りぬけた女性です。

 

Champagne BAUGET-JOUETTE

祖母に捧げたシャンパーニュ
の続きになりますが、このメゾンの看板シャンパンそのものが、彼女に捧げられたスペシャルキュヴェなのです。 

1811年よりエペルネに5代続くこのメゾンをネゴシアン（NM ）としての基盤を作り上げた女性が、
4代目マダム・スザンヌ・ボジェ。
家族体制のスタイルから葡萄畑を新たに購入・拡大しネゴシアンとして進化して、安定した品質管理で、一定した数量を生産させる事に成功したメゾンです。
（ジョエット家はスザンヌ婦人の旧家で、嫁ぎ先がボジェ家、つまり母体となったメゾンです。）

凄いですねぇ、女性陣の迫力。
女性が男性を完全に圧倒している様子が伺えます。
（本当に女性は働き者ですからね。）

ちなみにマダム・スザンヌは前列で白い洋服を着ている少女です。
彼女のお母さまが左側で腰に手を当てているご婦人。
お祖母さまが右側で気をつけ状態の方。

 

 

ここで少しこのメゾンの形態に触れておきましょう。
（少しマニアックな専門用語が出てきます。興味の無い方は飛ばして呼んでくださって大丈夫です。）

多くの大企業ネゴシアンが吸収・合併、買収、売却でフランス資本傘下さえも危ぶまれ揺れ動く今日、この中堅クラスのネゴシアンが伝統的なスタイルを守り抜き、確立したポジションでシャンパンを造っていることも注目したいと思います。

一般的にイメージされている、現在の大企業ネゴシアンとはかなり違うことに留意してください。

彼らのこだわりの中でも、最も注目すべき点は
100％自社畑による葡萄栽培を行い、その葡萄を厳選してシャンパンを造るという点です。
つまり契約農家などから葡萄を買い付けずに、一族が全ての葡萄畑の管理・栽培を行っているということです。

一瞬、聞き流しそうな説明ですが、プロにとっては実に重要な情報です。

多くのネゴシアンが自社畑からだけでなく契約農家から葡萄、葡萄果汁を買い上げてブレンドを行っている事は一般的にもよく知られていますが、
実はレコルタンも5％以内であれば、自社畑以外の葡萄を買ってきて自身のシャンパンにブレンドしてもRM（＝自社畑の葡萄だけでシャンパンを造る生産者と云う意味）の記載は許されるのです。

例えば、超有名なジャック・セロスとてエグリ・ウーリエのピノ・ノワールを買ってそれをブレンドしていますし、法律上も規定以内であれば問題ありません。
つまり、RM 全てがブルゴーニュの生産者のように自社畑だけで造っている訳ではないのです。
モチロン、100％自社で栽培、醸造を行う所もちゃんとあります。
ただその情報がきちんと行き届いていないレコルタン信仰はちょっと気になります。

このようにネゴシアンで100%自社畑でまかない、かつ味わいのあるシャンパンを造っているメゾンがまだあった事に感嘆される声も多く聞きます。
事実、イギリスのメディアでは特集記事が組まれた程です。

目が行き届く範囲での徹底した「品質管理と生産量の安定」に基準を置いたメゾンを確立することがこの婦人のモットーだったようです。
小さ過ぎず、大き過ぎず。

 話はシャンパンに戻りましょう。

 

彼女に捧げられたスペシャル・キュヴェが誕生したのは遡る事1811年。
（ロナルド・レーガンや岡本太郎と同じ産まれ年ですね。）

そう、彼女がこの世に生を受けた年に登場したのがこのシャンパンと云うわけです。
厳選したピノ・ノワールとシャルドネをブレンドし、5年以上熟成させてから門出が許されます。

メゾンのイメージするシャンパンのスタイルそのものがこのスペシャル・キュヴェであるそうです。

 

 

そして今年の夏、家族と共に誕生日を迎えたスザンヌ婦人。

数年前に引退しましたが、　（って1996年まで現役だったんですよ。）
それまであらゆる意味でこのメゾンを引っ張ってきた女性です。

写真からも伝わるでしょうか、婦人はとても上品でエレガントです。

今もシャンパンを飲む優雅さと健康は失わず。
もちろん仕事の話も大好きです。

まさに
シャンパーニュに産まれ、シャンパーニュと共に生きてきた人生でしょう。

「産まれた時から、このセラーと、葡萄の発酵する香りを嗅いで育ってきたのよ。
この世界から離れて生きる選択なんて考えもしなかったしあり得なかったわね。」

 実は、この台詞、
シャンパーニュ地方で生まれ育ち、家督を引き継ぐ次世代の若手の多くが、
地域を問わず、同じ台詞を語るのを何度も目の当たりにしました。
特に女性たちは、キラキラした表情で婦人と同じ目をしてそう言うのです。

 

いまだに、若き後継者達に

「最近のシャンパーニュ市場は如何なのかしら？
美しいシャンパンを造る事をくれぐれも忘れないでね。」

と、会えば口癖のように激励する、心はいつまでも現役の素敵なマダムです。

 

長生きの秘訣は、シャンパンに恋し続ける事。
・・・・でしょうか。 

 

 

 愛される秘訣もまた
シャンパーニュにありき・・・なのかな？

 

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コメント 12

マダム・スザンヌ・ジョエットの幼少期の写真と今。興味深く見せていただきました。伝統のメゾンに生まれ、メゾンを主導してきた方なんですね。お顔がとてもしっかりしていますもの。「シャンパンを毎日飲むとこんなに元気なのよ」とおっしゃっているような。。パワフルでもマダームとしてのエレガントさ
は、そのままに、しかもそれらが自然体で、すてきですね。
by TaekoLovesParis (2006-10-30 08:02) 

こんなに素敵な女性の事を知ることができ、光栄です
自分の全人生をシャンパンに注いだのですね
私のこころに情熱を注ぎ込んでくれた記事ありがとうございます
by love-ya (2006-10-30 09:23) 

あ、これは以前delphyさんの記事に書かれていたシャンパンですね！
又飲んでみたい銘柄がふえちゃいました。
by miumiu (2006-10-30 11:03) 

このシャンパーニュ　とてもとても美味しかった・・・
ほんまに心を潤す飲み物でした。
ここのシャンパーニュは、素直で情が深い・・・
by delphy (2006-10-30 18:16) 

taeko sama
コチラのマダムたちはお年を召されていても、まさに貫禄＆チャーミングなマダ～ムですね。
ご婦人と呼ばれるにふさわしい品格を感じますし、皆そう扱っていますね。
ある日、フランス男子がこう言いました。
「日本女性は本当にいつまでも若くてキレイ！
だけど、何故かある年齢を越えるといきなり年老いて男女の区別さえ難しいとても謎めいた存在だ・・・。」
世の中の皆さん、日本のマダムたちが死ぬまで美しくいられるように幾つになっても女性として大切に扱うべきではないでしょうか・・・＾＾；
by julliez (2006-10-30 22:43) 

yoocomint sama
ありがとうございます。
シャンパンに人生を捧げた女性が、ちゃんと敬意を持って評価される事が素晴らしいですよね。
by julliez (2006-10-30 22:46) 

miumiu sama
ここはシャルドネの使い方が非常に上手です。
樽熟の必要があるの？
と言わせる程、そのポテンシャルの引き出し方が絶妙♪
by julliez (2006-10-30 22:52) 

delphy sama
シャンパンと言う飲み物と自分ちの葡萄の性格を本当によく判っているのだと思います。
で、するべき事は何かを知った上で、挑戦するのが新しい世代の役割なんだそうですって。
by julliez (2006-10-30 22:55) 

ニコラさんがスザンヌ・ジョエット婦人をものすごくリスペクトしてたのを思い出します。
ワシも妻がスザンヌ婦人のように艶っぽく歳を重ねてくれるように努力しますわ。
日本のじいちゃん、ばあちゃんは気がついたらみんな菅原文太みたいになってしまいますもんね。。

ところでBAUGET-JOUETTE社はジャイロパレットを使ってるんですか？
by サンデブ (2006-10-30 23:53) 

素敵なお話ですね☆
こういうの聞くとますますシャンパンが愛しくなってしまう（笑）
「長生きの秘訣は、シャンパンに恋し続ける事。」
私はもっぱら飲む側ですので長生きの秘訣になるかわからないけど（汗）
これからももっともっとシャンパンに恋し続けたいな。
by シェリー (2006-10-31 00:24) 

サンデブさま
そうなんですよ。
じつはこのマダムの写真も彼のオフィスの机に飾っているものを使わせてもらったんですが、本当に、リスペクトしてますね。
ニコラ曰く、この写真はマダム、気取ったバージョンだそうな・・。
ちなみにピュピトルもキュヴェによっては使っていますが、ジロパレット使用に切り替えしてますね。
その方が文句言わずにモクモクと完璧なお仕事してくれますし・・・。
by julliez (2006-10-31 01:29) 

シェリーさま
平たく言えば、毎日グラス一杯のシャンパンを飲んでいるのよって話になるようですので、シェリーさんも間違いなく長生きできると思いますよ。＾＾
by julliez (2006-10-31 01:32)