floraison 2011

今年のフランスはいきなり夏日が続いています。

 

本来なら6月に開花する葡萄の花が軒並み5月に開花してしまいました。

 

これは平年に比べて15日〜20日以上早い開花で、
フランス全土的に葡萄の開花が一斉に早まっています。

昨年の10月に始まった長い冬の影響で、今年の春は少し早めに来るかもしれないという話をしてたのもつかの間。
今年に入ってからは雨が非常に少なく
4月に本来降るべき雨もまったくカラカラ天気で、5月の段階で「かんばつ」という言葉を天気予報以外でも耳にします。

 

実際だとこの状態であるのがベストなのですが
（この状態をmontre モントルと言ってつぼみの房が現れる状態です）

 

すでに満開です。

葡萄の花が開花してだいたい100日目が収穫の目安といわれています
（実際はその時の気象状況にもよります。糖分の含有量や酸値など確認しつつ収穫が判断されます。）

こうなると
現状のまま成長が進むと、収穫が8月末から9月の頭になるという事なのです。
（シャンパーニュ、ブルゴーニュ、ロワール、ボルドーと確認してきましたが、全部開花。
ボルドーやコニャックに到っては、今週にも開花が終わりそろそろ結実しそうな勢いなのです）

開花が早いと、まずこの時期に起こりやすい雹や霰の心配があげられます。
花がやられてしまうと結実できないのでこの先、一年の仕事を棒に振ることにもなりかねません。
今年は特にゲリラ豪雨が多発していて、（かんばつモードなのに）
一部の小さな区画が短時間の集中豪雨で畑が水没したり、その後霰まで降り
葡萄樹がダメージを受けたり完全にショック状態でフリーズしてしまった地域もあります。

アジアの水田状態になっていた畑から水が引いた状態です。
霰の被害も重なり、かなり傷付いていますが開花前でつぼみは何とか無事だったので
1週間ほどフリーズしますが、大抵は葡萄樹の底力で、成長を続けようと必死で生き出します。
葡萄の生命力の凄まじさを感じる瞬間です。
命の凄さを教えてくれることに感謝します。

 

この復活した葡萄が最終的にどんなワインになるのか
それはまだ誰にもわかりません。
ただ
ワインを商品としてみる人の思いと、この葡萄と困難を乗り越える生産者の思いは全く違うと思います。

 

 

現段階では断言できませんが、
これは生産者のバカンスが返上で畑と天気とにらめっこと言う状態になりそうです。

ただ、場合によっては過去にも開花が早く、色々と懸念された年がありますが
思った以上に早く秋が来て収穫は平年に近いスケジュールになったこともあります。
今後の天候に目が放せません。

 

さて、葡萄の花。
とても地味で、本当によく気をつけて見ないとそれが花だったのかも分からないほど控えめです。

よく花房を葡萄の結実状態と間違えられるのですが
花房は近くで見るとピーマンのような形で、それが開いて花が現れます。

この小さな、小さな、地味な白い花
しかし葡萄畑で一斉に咲き始めると、
葡萄の花の甘酸っぱい、何とも言えない爽やかで心地の良い香りが風が吹くたびに広がります。
葡萄畑の中の至福の時間の一つです。

この香りに誘われて、
いつまでも畑で花を観察しているのはとても楽しい時間です。
そして、とんでもなく日に焼けてしまうキケンな一時でもあるのですが（笑）

 

 

今年もこれから収穫まで
大忙しの時期が始まりました。

一足早い開花、天候の懸念など、心配事は尽きませんが
彼らの生命力と、生産者の想いをしっかり感じられる年であることは間違いありません。

 

どんな状況であっても、一生懸命な葡萄の生命の底力にひたすら感謝しつつ・・。