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[ひらめき]最終更新日:12/10/2011

le chêne [travail 仕事いろいろ]

ワインのベッドであるオーク樽のことについて少し・・・。


先日Inatimy さんからご質問いただいた樽についてお返事が長くなるので記事にしました。

ワインの樽は何の木から出来ているのでしょう?

 

 

オーク(樫)の木で作られる樽はフランスではle chêne (総称)と言われます。

樽はワインの発酵や熟成に使用されます。

 

 

[ひらめき]その効能は

●木目からの微妙な蒸発によりワインに凝縮感が出来る。
●わずかな酸素の混入により熟成感が生まれる。
●色素、香り、など風味が樽からワインに添加される。
                                  など。

 

                                       

ワインツウの方はよくご存知だと思いますが

特に新樽のニュアンスはワインにとても影響を与えやすいのです。
(バニラ、トースト香、タンニン、などが特に代表的なニュアンス)
例えばシャルドネはとてもオーク樽と相性が良いのですが、これが(特にドイツの)リースリングのような繊細なワインになると途端にバランスを崩して個性を奪いがちです。

 

 

 樽の種類は色々ありますが、代表的なのはアメリカン・オークとフレンチ・オーク、そしてリムーザン・オーク。

●アメリカン・オーク
板目取り という裁断方法で鋸で4分割して木目に沿わさずに板材を取っていくために木材使用率は50%で経済的ですが鋸で裁断するために樽の風味がよりきつくなります。
本来はバーボンなどに向く種類なのですが、例えばスペインのワインやシェリー、オーストラリアでよく使用されています。

●フレンチオーク
柾目取り という中心から放射線状に木目に沿って6つに割る方法(木目が細かいのでのこぎりでは切れない)で外気に対して伸縮が少ないので隙間がなく、かつ風味が穏やかに付くので酩醸ワインには欠かせない樽です。
ただし木材使用歩合は20%と不経済でかつ高価格。

有名な産地としては
Allier 県Tronçais 、そして Nievre 県、Nevers が有名。

○リムーザン・オーク(フレンチオークの部類)
Charante 県のLimousin の森林は有名。
木目が比較的荒く、スパイシーな風味が抽出されるのでコニャックなどの蒸留酒に使用されます。

ちなみに樽は色んな大きさがあり、地域によっては名称も変わります。

 

一般的に呼ばれるバリックとはアキテーヌ一体で使われる樽の呼称。
北東ではピエスとカテゴライズされています。
教科書では記載されていませんが、シャンパーニュ南とシャブリでは通常、fût (フュ)と呼ばれています。(自分調べ)

  • Barrique (バリック)・・・・・・・ ボルドー(225ℓ) コニャック(300ℓ)
  • Piéce (ピエス)・・・・・・・・・・・ ブルゴーニュ(228ℓ) ボージョレ(216ℓ) シャンパーニュ(205ℓ) アルマニアック(400ℓ)
  • Stuck (シュトック)・・・・・・・・・・ドイツ・ラインガウ(1200ℓ)
  • Fuder(フーダー)・・・・・・・・・・・ドイツ・モーゼル(1000ℓ)
  • Botte (ボッテ)・・・・・・・・・・・・イタリア・バローロ(500ℓ 位)
  • Pipe (パイプ)・・・・・・・・・・・・・シェリー、ポート、マデイラ(550ℓ 位)
  • Butt (ビュット)・・・・・・・・・・・・スペイン・シェリー(600~650ℓ 程度)
  • Hogshead(ホグスヘッド)・・・・Buttの約半分量 (300~350ℓ 位)

ちなみに、重さを量るTON という単位はボルドーワインの取引単位になったトノーTonneau (900ℓ=4樽分)から来ています。
(どうでもいい話ですが、気温℃や長さcmや重さkgは日本とフランスは一緒の規格ですのでこれは嬉しい。)

 

 

 樽の効能で所謂ワインの風味付けに有効なのは新樽なのですが、最近ではバリバリに樽香を効かすワインは野暮なので、本来のワインの風味を引き立てさせる方向に戻りつつあります。
(元々、新樽の香りを強調したのはアメリカ市場の要求だったからだそうですが、最近そんな不自然な風味のワインがイヤになったフランスの生産者が増えてきているのは確かです。)

メドックの生産者の間ではサンテミリオンやポムロールの右岸的ムーヴメント、新樽率200%的なタルタルしたワインがグローバルにもてはやされていることを、ボルドーワインの個性の喪失のように感じている生産者も多く、(今では右岸も落ち着いてきましたが)敢えて樽の比率を昔ながらのニュアンスに以下に抑えるスタイルが好まれるようです。


 

 こちらはボルドーのガレージワイナリー

つまりボルドーにおけるブルゴーニュのような自社畑所有の小規模生産者で、大手に葡萄を売らずに自社でワインを生産しちゃう造り手のカーヴなんですが
後ろ側の樽は所謂ボルドーのスタンダードなサイズの樽で、手前の少年が触れているのは、
イタリアの大樽(Botte)なんです。

これは面白いと思います。
特に1980~1990年代あたりはイタリアでもスーパートスカンという新しいスタイルのワインが世界中で大ブレイクして、イタリアの土着品種をばんばんメルローやカベルネソーヴィニォンなるフランスの高級葡萄品種に植え替え、サンジョヴェーゼ(イタリアの葡萄)とブレンドしたり果てはメルロー100%なんて放ってきたイタリアにとっては、当時フレンチオーク(小樽)の新樽使用が主流になりだしていたからです。
(確かバローロボーイズにも注目が行ったのはこの辺りでしょうか? かなり曖昧ですが)

イタリアンオークはたいていスロヴェニア産の樽でしかも大樽でラテンなノリでワインを造っていたのですが、ワイン造りをフランスで修行してその手法をイタリアに多くの若手醸造家は持ち帰り、イタリアワインを洗練させた立役者達の間では、メルロー、カベルネ、フレンチオーク(新樽)が3種の神器のようにもてはやされていたことを思うと、今こうして過剰な新樽比率に嫌気がさしたメドックの生産者がイタリアの大樽で樽香に対抗していることがEUのグローバルなのかと思ったり・・・。

 

 

樽は火入れをして焦げ目をつけてトースト香のような少し焦げたニュアンスをワインに与えるのですが
これが度が過ぎると、典型的な「昔のアメリカワイン」のように(失礼!)
シャルドネといえどもバターやナッツ、トーストを超えてもはやワインと云うよりも樽自体を飲んでいるような味わいになります。
それがお好きな方もまだまだいるようですが、

「オークの香りがワインの主な風味と言う人はケチャップを野菜と言う人と等しい。」

などと斬られちゃうかも知れません。
しかもそれ、カリフォルニアの醸造家が仰っています。(←これはかなり受けますね。)
余談ですが、フランスの生産者の家庭には樽はあってもケチャップはありませんです。(自分調べ)

 

 

それから
ワインに感じる樽のニュアンスは、全てがこれらの樽で寝かされたワインだからではないのです。

 

例えば日本で1000円前後で手に入るワインなんかに、もしはっきりと分かる樽の風味がある場合、
それはオークチップと言って、樫木のチップをタンクに入れて香りを移す手法でつけられた香りです。

新世界のワインではもはや当たり前ですが、EUではその認可は厳しいようです。
フランスワインには禁止されていますが、この法令が下される前に、安いワインの生産者はちゃっかり使用しているようなので、2004年(だったと思います)以前のフランス産「安ワインの樽香」はチップかも知れませんね。

 

それでは
今度はワイン樽がどういう工程で出来上がるのか、何てことを更新したいと思います。
興味ある方がいらっしゃれば・・・ですけど・・・。(いらっしゃいます?)

 

 


 


タグ:chêne
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コメント 21

noie

いろいろ勉強させていただきました。
やすいワインはチップ入りなんですね~
少しでも知識があると、選ぶのが楽しくなりますね。
下戸でアルコールが駄目なのですが、仕事上知っておいた方がよいこと
が、たくさんあるので、ココで勉強させていただきますね。
よろしく☆
by noie (2007-09-07 16:01) 

Wino

Allier 県、Tronçais 県、Nievre 県、Nevers 県でまた風味がどう違ってくるか、
その県の特徴なんぞご存知でしたら、教えてください。。。
by Wino (2007-09-07 23:02) 

ハイマン

ワインの香りしてきた~^^
さて今週末 もらったワイン今年こそ開けられるかな!
理由があって開けられないんですよ~
by ハイマン (2007-09-07 23:25) 

miffy

樽が何でできているかはワイナリーで説明を受けて知っていました^^;
そういえばスロヴェニアで樽の話聞きましたね。
記事を読んでいて思い出しました。
by miffy (2007-09-07 23:53) 

Inatimy

素朴な疑問に、きちんと答えてくださってありがとうございます♪
日本の樽は杉で出来ているので、やはりお酒の種類によっていろいろ違うんですね。
焦げ目までつけるとは知りませんでした。
ドイツのハイデルベルクのお城の地下には、222,000リットルの大樽がありました。
そのとき、どうやって作ったのかとても気になっていたので、
次回の樽製造工程も興味津々です♪
ちなみに、スペインでも「ケチャップは邪道」みたいな扱いだったので、
私も使ってませんでした・・・。
by Inatimy (2007-09-08 00:20) 

Ducca

うーーーむ。。。
思わずうなってしまいました。
今度からワインの楽しみ方が変わりそうです。
次回の樽製作工程もすごく楽しみです♪
by Ducca (2007-09-08 04:42) 

foretーbourgogne

樫の木は、フランスでは、一般的な木材ですが、固すぎて、ノコギリの歯を強烈に痛めます。結果、ノコギリの歯はヤスリで研ぐことになるのですが(フランスでは刃モノはヤスリで研ぐのですが)、この作業は大工でもない限り、単調でかなりツライ作業でしたね。漆喰を「固定?」させるために使われていた、多分150年ぐらい前の「カシの木」は、何かで(多分大きな刃モノだと想像したのですが)、信じられないほど美しく「裂かれて」いて、その名人技に驚いたのですが……ノコを使わずに作る樽木を……削る作業を(滑らかにするために必要でしょうから……を想像したら(本当に、本当に堅いですから)……ちょっと気が遠くなりました。

ちなみに、むかし、居酒屋(大衆)で出していた「樽酒」(日本酒)は、一升瓶に杉箸を割いて入れ……香りをつけたもので、確かにそれで「十分」樽酒の味になったものです……今、そんなことして「お酒」を出している人は「樽酒の人気は落ちているので?」いないようには思いますが……。これは蛇足の蛇足。
by foretーbourgogne (2007-09-08 06:27) 

toraneko-tora

樽もワインの命なんですね
by toraneko-tora (2007-09-08 08:08) 

やっぱり、樽も重要な役目を担ってるんですね~ヽ(´▽`)/
by (2007-09-08 09:05) 

delphy

樽は、ワインに味をつけるのではなくて、ワインを育てるために使って欲しいです。
樽の味がほとんどだったらがっかりですもの・・・
by delphy (2007-09-08 11:13) 

crow

樽の香り、けっこう好きですけど、強すぎるのも考えモノですよね。「オークで作ったワインです」なんてキャッチフレーズつきそうw それでも、最近のカリフォルニアは品良くなって、昔の強い樽香が懐かしいようにも感じます。

ところで「オーク」の由来なんですが、どうも樫(カシ)と楢(ナラ)が混同されて結論が出ません T T
落葉樹が楢、常緑樹が樫だそうです。フレンチオークって落葉してますか?
by crow (2007-09-08 11:38) 

newyork

だから、アメリカのワインは木を飲んでいるような味なんですね。納得です。ケチャップを野菜なんて言う人がいるんですか?いたらもちろんアメリカ人ですね(笑)(失礼)。アメリカ人とフレンチフライを食べると、ケチャップを食べているんだか、フレンチフライを食べているんだか、わからなくなる時があります。。。(悲しいです。。。)
by newyork (2007-09-08 11:57) 

nicolas

自分は白のブルゴーニュに主に感じるのですが、
「納屋くさい」と称している香りも、樽臭なのかなぁ・・・
アメリカの土の癖だけじゃないんですね、やっぱり(笑)
by nicolas (2007-09-08 13:34) 

koba-sf

樽香バリバリのアメリカ人ですが何か?w

さっきシャルドネ搾りを手伝ってきました。手のベタベタは洗えるけど、足腰が痛いっす。
アメリカンオークが割安なんだけどなあというオーナーに無理矢理中古のフレンチオーク樽を求めさせ、その中にシャルドネの搾り汁を納めてまいりました。1樽がうちに配給予定なので、結構真剣だったり。
あ、ちなみに安物の果実らしいですが、糖度は21brixでした。カリフォルニアは安定しててつまんないです。

樽香バリバリ、カリフォルニアではまだまだ普通というかRequiredですね~。(笑)
こっちでシャブリ飲むと露骨に変な顔する人、とても多いんですよ・・・。
中古の樽でオークの香りがイマイチだったら、秘儀オークのスパイラル吊り下げ、やってもらいます。
カリフォルニアで受けなくなってきたのは、むしろMLです。最近はML抑えて樽香バリバリ、とかが出回ってます。

ちなみに、僕の周囲でトマトケチャップは「アメリカンソース」とか「民主党ソース」と呼んでいます。
でも、マクドナルドがあんなにはびこるようじゃ、フランス人もアメリカの悪口言えないよね。(爆)
by koba-sf (2007-09-08 16:05) 

ミカチ

面白い記事でした。樽がそのようにワインに影響を与えていたなんて知りませんでした!
これを知っただけでもかなりツウな気分になれますね(笑)
イタリアのカーヴを見学したことがありますが、上の写真のような新品の樽が並んでいたのを良く覚えています。
過去に行ったいろいろなカーヴの写真をもう一度見返してみたくなりました。
by ミカチ (2007-09-08 16:18) 

atelier-northern-photo

最近は大手醸造所でもステンレス樽を導入しているところが多いと聞きます。
均一な品質を求めてのことらしいですが。
ですがやはりワインは木樽だと思います。
よく熟成された1級・2級のふくよかなアルコール感と
甘味・酸味・苦味と続くハーモニー、そして鼻から抜けるアロマ..
ああ、ここに来るとワインが飲みたくなってダメだ....(笑)
by atelier-northern-photo (2007-09-08 21:30) 

yoku

ワイン樽の底の深さを知りました。それにしてもワイン生産者
にとって莫大な数の樽の生産が必要なだけに、将来があ心配
になってきます。どうなんでしょう?
by yoku (2007-09-09 06:10) 

krause

とても勉強になりました。感謝!
by krause (2007-09-09 08:17) 

面白いですね~ワインって本当に奥が深いですね~樽一つとっても色んな事が絡んでいる。
樽ってちゃんとビニールでパックされて売られているんですね
ワタシとしては フランスのワイン生産者家庭にはケチャップがない!!ってのがオドロキです(笑)
by (2007-09-09 08:46) 

Mimosa

ワイン樽の種類がさまざまあることに驚きました!
赤ワインで適度に樽香があって、深い味わいのあるのが私のお気に入りです☆
今度から樽香のワインを飲むと、どんな樽に入ってたのだろう・・・?って、考えてしまいそうです。
次回の、ワイン樽の出来る工程も楽しみにしています~♪
by Mimosa (2007-09-09 18:38) 

なるほど。日本の樽酒と同様に、ワインの樽も若干の風味付けに必要なものと考えていました。樽での熟成をふくめてワインなので、樽の風味は宜しいと思いますが、添加者の風味は宜しくないですね。最近はちょっとワイン本来に回帰しているのはうれしいことです。
by (2007-10-16 01:00) 

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