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[ひらめき]最終更新日:12/10/2011

la mère des champenoise [vignerons 生産者ウラ話]

フランスのお母さんたちは、日本のオカンを彷彿させる強さがあります。

 

と言っても決して恥じらいをなくしたおばちゃんでは無くて・・・。
田舎の「お母はん」たちは信じられないほど働き者で、家族の太陽そのものなのです。

フランス男子はママンという太陽の周りを巡る衛星のようなものです。

最近は日本のワイン関連の多くの雑誌で生産者が登場し、顔の見えるワインとして彼らの活躍が身近に見られるようになりワインは人が造るもの・・という感覚がより鮮明に感じられるようになり生産者達はとても嬉しく感謝でいっぱいです。

そんな生産者でもかなわないのがママンの存在。

彼女達無くして、彼らは活躍など出来よう筈が無かったからです。

シャンパーニュのママン。

彼女は私にとっても大切なママンです。
初めてオーブに来た時に、家族同様に大切に、親切に、温かく私を迎え入れてくださった方です。

彼女の住む村は50人位しか村人は住んでいません。
私が到着した時は、村中から異国の邦人を一目見に皆出て来たくらいです。

今では日本からバイヤーさんやら、私の知り合いがお祭の時期になると挙って遊びに来るので
どこの外国人よりも馴染みの感覚を持っていただいているようですが、それ以前は外国人はおろか東洋人などテレビで見る以外接点すらありませんでした。

 

エペルネやランスと違ってオーブは僻地に近い田舎です。
しかも限りなくブルゴーニュに近い所為でどっちつかずの浮いた感じがあり、はっきり言ってエペルネの生産者は(昔からの確執が影響しているのですが)オーブをコバカにしている人が多いのです。

まぁ、東京やニューヨークやパリ、ロンドンの都会の人間に言わせれば
「どんぐりの何とか・・」に近いクダラナイ事なのですが、その話はまた今度。

私は多くの合宿先の中でも特にオーブのママンとアルザスのママンに心惹かれるのですがその最たる理由は
私の言語取得に深く関わっているからです。

そして彼女達は誰よりも働き者で、明るく、優しく、寛容で懐が深い魅力溢れる女性なのです。
人間として憧れます。

 

この二人のママン以外のマダム達は英語、スペイン語、(私には分かりませんが、ドイツ語も)など操る方が多くごちゃ混ぜでコミュニケーションが取れるのですが、オーブのママンはフランス語のみ。
そしてアルザスのママンは強烈なアルザス語。
当時の私には極めてハードルの高いコミュニケーション術を必要としたのです。

 息子と2ショット♪

 

今でも私の語学力は情けないほどサイテイなのですが、当時は悲劇的なほどで
オーブの小さな村にフランス語(しかもオーブ訛り)以外の言葉を話せる人間は皆無でした。

 

ある日、食卓に上がる時、辞書を片手に気分だけは万全の体勢で挑んだのですが
若手生産者は仕事が立て込み、待っている間、私は予想外の質問攻めにあったのです。

仏蘭西人の好奇心は数字を絡めた質問攻めです。
(日本の人口、富士山の高さ、東京の面積、休日の数、島国日本の島の総数など予想外に愉快な視点で質問が繰り広げられます。)

私のへたっぴな発音では通じないので辞書の登場です。

 

が、

ある部分を指し示すと重大な問題に直面しました。

 

結局辞書は何の役にも立たないことが判明。

 

 

何故だか分かりますか?

 

マダムもムッシュも老眼です。

 

辞書は文字は小さくて読めません。

 

お陰で聞き取り能力と絵がウマくなったのは思わぬ収穫でしたが、実際は大変でした。
(未だにカンとテレパシーに頼り切ったコミュニケーションですが、何故かこっちの方が完璧です。)

 

 

マダムにとっては、単純でいてとても忙しい田舎の生活で、異国の人間の登場はきっととてもエキサイティングなスパイスだったようです。

畑とセラーの仕事にひたすらのめり込む息子は、時に気難しいときもあります。

食卓では家族だけの場合、テレビの音だけが響いている時もあるようです。

だから客人が来るとマダムはとても嬉しそうなのです。

「私はお料理が下手なの。こんな田舎料理しかないけれど沢山食べてね。」
彼女の口癖ですが、私はママンのサラダが最高に好きです。
彼女のドレッシングは魔法のように美味しくて、彼女の育てた野菜を一緒に食べると元気が湧いてくるのです。

 

 

 

そして庭で収穫した果物でつくるタルトとジャムは最高です。

ミラベルのタルトは私の大好物なので彼女はいつも一番大きいものを私にくれます。
(お陰で体重は右肩上がりを極めていますが、何か・・・?)

シンプルなお料理ですが、心が入ったお料理はどんなご馳走よりも体に染み込み元気を与えてくれます。

 

ママンは息子に負けないくらい長い時間を畑で過しています。
葡萄の気持ちが分かる人だと思います。
(だから葡萄より表情がはっきり分かる私とのコミュニケーションは楽勝なのでしょう。)

葡萄畑で幸せそうに笑う彼女のまわりの葡萄は同じように嬉しそうなのです。
(頭のおかしいことを書いていると思われるかも知れませんが、至って真剣です。)

 

畑は化学薬品を使用しないので目が離せません。
特に若い葡萄の木は近年の温暖化の影響による不安定な天候に対する抵抗力がまだありません。
ちょっとした変化や連続した雨、若しくは日照続きは命取りになる場合もあります。
つまりバカンスには行けないのです。(8月にはいれば病気の心配がほぼなくなるので一息つけるのですが、この所雨が多かったり気温が上がりきらない夏が続いているので気分的にはスッキリしません。)

多分、大将よりも畑に出ている時間が長いのはお母さんかも知れません。

地球のコンディションがおかしいのか、偶々天候不良が続いているのか私達には知る由もありませんが、温暖化の影響ではないだろうかと思う天候は都会にいる以上に肌で感じます。
実際に大手のシャンパンメゾンは挙ってもっと冷涼なイギリスの南部にあるシャンパーニュ地方とよく似た土壌構造がある地域の土地を確保して将来シャンパーニュで上質のシャンパン用葡萄が収穫できるように保険として確保する動きが見られます。

 

 

うちの大将は今や当主として総指揮官として活躍しますが、ママンの補佐なくしてはここまで来られなかったでしょう。

私は心の中で思っているのですが、もし今の時代に彼女が現役だったら
素晴らしい才能を発揮してシャンパンを造っていたかも知れません。

 

そういう女性だからこそ、彼女の息子が質の高いシャンパンが造れる環境を作ってあげられるのだと思っています。

 

彼女のお母さんも凄いです。

 

おばあちゃまも、相当ドラマティックな人生を送った女性です。

一度目の戦争で最初の夫を亡くし、5人の子供と畑とカーブを抱えてそのすべてを守り通した女性です。
おじいちゃまは94歳。
二度目の旦那様ですが、彼も2度目の戦争でドイツ軍と戦いに行きました。
(いまでもおじいちゃんはドイツからシャンパンの美酒と土地を守ったことを人生最高の誇りに思っています。)

殆どの男達が戦場に行っている間も女性達はシャンパンを造り続け、畑の葡萄を守り続けました。
一旦荒廃してしまうと葡萄畑は中々元に戻れないのです。

空爆の最中ですら、収穫を行う生産者(の家族である女性)がいたほどです。
そして醸造したシャンパンは地下セラーで瓶詰めされますがそれもすべて女性達が手作業で行っていたのです。
これは大変な労働です。

しかしシャンパンを造ることは彼らにとっての誇りでもあるわけですから
それを取り上げられることはすなわち死を意味します。

女性達からいつも聞く台詞ですが
私はいつも感銘を受ける言葉があります。

シャンパーニュに産まれ、シャンパンと云う飲み物と共に生き抜いてきた人達の言葉です。

華やかなイメージのシャンパンですが、
造る人たちはとても素朴な農民なのです。

生まれたときから、ほぼ運命が決まっています。

そして彼らは葡萄と共に生きて、畑とカーブで大半を過す事を誇りに思っています。

「生まれたときからこの葡萄畑を眺めて、カーブで葡萄がワインへ、そしてシャンパンへ生まれ変わる様子を香りをかいで体感しているのだから、他の人生を選択する理由が見つからないわ。
このカーブで発酵する果汁の香りを嗅いで御覧なさい。
あなたは何を感じる?
この香りから離れられと思う?
葡萄とシャンパンは私達の人生そのものなのよ。」

 

おばあちゃま達は今でも元気ハツラツで
フルコースの手料理でおもてなしを受けたことがありますが、素晴らしく美味しいものでした。
おばあちゃまは80をとうに超えていますが、車も運転するし元気なエネルギーの塊です。


たまに遊びにやって来るおじいちゃまの戦友たちと午後のアペリティフをシャンパンと甘いメレンゲ菓子で楽しみます。

働き盛りの時代には彼らは殆どシャンパンを飲んだりしません。
(お祭やお祝い事の時だけは別ですが、普段は忙し過ぎてワインも飲まないくらいです。)

孫のシャンパンを味わいながら、小鳥のさえずりのように昔の話に花を咲かせる彼らの瞳は少年と乙女です。

 

そして彼らの興味深い歴史のお話を聞くことも
私にとって感慨深い時間なのです。

 

 

相変わらずテレパシーですけど。

 

 

 


nice!(40)  コメント(19) 
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コメント 19

miya_gon

vendémiaireさん?で、いいのかしらん?(^^;)
素敵なママンですね。おばあちゃまも素敵。
それ以外の言葉が見つかりません。すごいわ。
ああ、あたしももっと頑張らねばって、思っちゃいました。
すばらしい文章をありがとう。また明日から元気に仕事できそうです。
by miya_gon (2007-11-10 19:17) 

miffy

素敵なお話ありがとうございました^^
とっても素敵なママンとおばあちゃま、おじいちゃまですね~
by miffy (2007-11-10 19:55) 

チャッピィー

こんばんは。
本日一度訪問しました、チャッピィーと申します。
宜敷お願いします。
本日は、ブログに訪問頂きコメント有り難う御座いました。
記事素敵ですね・・
此からも、宜敷お願いします。
by チャッピィー (2007-11-10 20:35) 

どらっち

Julliezさんは、幸せ者ですねぇ。すてきなママンが実母の他にもいるんですもの。
私も、すてきに年を取りたいものです。・・・無理そうだけど。
by どらっち (2007-11-10 21:39) 

TaekoLovesParis

すてきなお話ですね。まさにドラマです。
特におばあちゃまが戦争中もシャンパンを作り続けた話は感動でした。
天命で天職なんですね。そしておばあちゃまとおじいちゃまの写真は、映画の
一こまのようで、すてきな老夫婦。
ママンは私は現役ばりばりよ、と気の抜けない緊張感あふれるお顔つき。
でも愛情いっぱいで、julliezさんをいつも両手を大きく広げて抱きしめて
くださる感じですよ。御当主ヴァンサンくんに似ていますか?
by TaekoLovesParis (2007-11-10 22:13) 

aia

最近やけに涙もろいせいもあるのでしょうが、この記事を読んでいたら涙が出てきました。文字通り、「地に足をつけて」、その土地にしっかり根付いて生きてるという感じですね。ママンも、そのお母さん夫婦も、すごく素敵で、その素敵さはちゃんとお顔に出ていると思いました。いい写真です♪*^_^*
by aia (2007-11-10 22:39) 

Inatimy

タルトを切り分けていらっしゃるお顔が、とっても素敵♪
強いから、人にも優しく出来るんですね。 人に優しくなれるから、たくさんの人に囲まれていて・・・。 
いいですね、そんなふうに生きていきたいです。
追伸: Recioto 入手できました♪ 
近所の酒屋のおじさんも 「知ってる? これすっごくおいしいんだよ。」 と言ってたので、楽しみ♪
by Inatimy (2007-11-11 06:49) 

newyork

素敵なお話をどうもありがとうございました。異国の地にいる身として、とてもしんみりしました。人間同士の付き合いって素敵ですよね。
by newyork (2007-11-11 07:16) 

rino

本当に素敵なお話でした。ありがとうございました。
人とのこんな関わりを持てることは素晴らしいですね・・
テレパシーは絶対に伝わっているはずです!
そして、ママンの強さと優しさと寛容さに惹かれるものがありました。
今からでも遅くなければ、ほんの少しでもいいから、こんなママンを目指していけたら
素晴らしい・・・
by rino (2007-11-11 08:14) 

母は偉大ですね~。
>フランス男子はママンという太陽の周りを巡る衛星のようなものです
ママンは、すべて生命の源ですね。 素晴らしいです。
by (2007-11-11 09:46) 

hikarian

良いお話ありがとうございました。
写真からもママンのパワーが伝わってきます。
by hikarian (2007-11-11 21:12) 

Julliezさんのママンに対する愛情たっぷりの内容 ココロにじんわり届きました。
そちらの方で「ママン」というとイタリアかと思っていたのですが フランスのママンもこんなにパワフルなんだ……
母は強さがファミリーの絆を築いているという感じですね。ああ母は偉大だ。
by (2007-11-11 22:02) 

どちらあの国でも、マンマのパワーは、凄いものですね^^。
パパ達が、ヤキモチ妬くかもしれませんね。
おじいちゃま&おばあちゃまの葡萄畑を命がけで守ったお話・・・とても感動いたしました。
この方達がいたから、今、私達はおいしいワインが飲めるのですよね。
感謝☆
by (2007-11-11 23:23) 

nicolas

julliezさん、どーもアヤシイ雰囲気があるなーと思っていたら、
やっぱり・・テレパシー使えるなんて、すごい(笑)
でも、なんかわかるなぁ。留学生来たときもウチはそのノリでした。
世界に誇る農業大国のフランスの縁の下の力持ちはやっぱ「おかん」なんですね。
田舎比べは、群馬と栃木どっちが田舎?って訊いてるようなっものかな。
でも、空っ風とかかあ殿下といえば、こっちです。(笑)
それにしても、フランスのおっかさんはやっぱ働き者で素敵♡ ミラベルのタルト食べたいー!
by nicolas (2007-11-12 12:37) 

素敵なお話ですね♪
やっぱりどこの国でも母は偉大ですねヽ(´▽`)/
by (2007-11-12 16:30) 

rose

温暖化の影響、ブドウ畑にとっては本当に深刻ですね。
生産者の人生をかけたワイン作り、素敵です。
そして、本当に誇りをもって働いてることを羨ましく思いました。
by rose (2007-11-12 21:52) 

delphy

守るものがある人生。
それが全てだといえる人生。
生きる喜びを得た人は、強い。
私も、そんな人間になりたい。
by delphy (2007-11-13 14:40) 

julliez

★みなさま
コメントにご訪問、ナイスまで頂戴していつもありがとうございます。
コメントのお返しを暫く一括でまとめてしまう無礼をお許し下さいね。
皆様のブログにお伺いしてコメントを残す形で暫くお許し下さいませ。
いつも心温かいメッセージを拝見させていただき、本当に嬉しく感謝でいっぱいです。
記事に関するご質問に関しては遠慮なくメッセージ欄からどうぞ、どうぞ♪
by julliez (2007-11-13 20:01) 

ミカチ

ペラペラに話せたらコミュニケーションは楽になるでしょうね。私はもう諦めましたが。
julliezさんは良い人たちに恵まれていて羨ましいです。
ちょっとだけ中級ワイン教室に参加してきました。
julliezさんの記事で樽のこととか勉強させてもらっていたのですう~っと頭に入ってきました。
感謝しています^^
by ミカチ (2007-11-14 01:48) 

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