Vol de Nuit 夜間飛行

コニャックにはフランス空軍の演習所があります。

私の親友の旦那様は元空軍で今はコニャックの生産者です。

だから今でも夏の夜間飛行演習の時間になると夕食も程ほどに、ソワソワしだします。
そして例え一人でも、彼は出掛けて行くのです。

彼は、あの見晴らしのいい高台の葡萄畑に出かけて夜間飛行の様子を眺めに行くのです。

 

 

そして近い将来、彼の相棒になる幼い息子の代わりに、ここ数年は私が好奇心イッパイにお供するのです。

 

彼はいつも美しい夕暮れを見せに連れて行ってくれたり
戦闘機や飛行機の演習を見に連れて行ってくれます。
そして夕日のベストスポットもよく知っているので私が退屈しないように
幼い頃から慣れ親しんだ土地で、彼の知り得る限りの美しい光景を素晴らしいタイミングで見せてくれます。

私は時々、空を飛ぶ文豪のサンテックスは彼みたいな人ではないかと勝手な想像をしてしまいます。

彼は詩人ではありませんが、無口で優しくてとてもロマンティックな紳士だと思います。
ロマンティックな・・の部分は、少し大袈裟ですけど別の意味があるんです。
それはまた別の機会にしますが。

 

星が星としてきれいに見えるフランスの田舎では、甘美な夕暮れの風情をじっくりと堪能できるのです。
今でもちゃんと空の上にはこれほどにも星があったのです。

小さな頃、田舎で見たはずのこぼれるくらいの数え切れない星達の事を、いつの間にか忘れていたことを、ここに来ると彼らの輝きをもって思い出させられるのです。

いつの間にか大人になってから、田舎では夜が来ると、何にもない、何も見えないと思っていたのす。
ここでは庭に蛍も飛んでいます。
夕方の風は、日暮の葡萄畑の土の香りをなびかせて静かな存在感を示します。
それは北東フランスにはない風です。
明らかに大西洋からやって来る、湿り気のある風なのです。

　ボケボケです。

 

夜間飛行演習は、11時過ぎまで行われるようで、新米パイロットが練習している様子と、ベテランが飛んでみせる違いを教えてもらいながら足元も見えないくらいの闇の中で眺めます。

街明かりは地味ながらも地上の星のように見えます。

空には、この日は満月が浮かび上がりました。

月がこんなに明るく感じるのは、地上が暗い事を意味するのですね。

 

 

月の左下に見える二つの光は夜間飛行中の２機。
ちっぽけなデジカメですら捉えることができました。

まるで蛍が戯れているみたいです。

 

残念ながら満天の星はこの画像の大きさでは見る事は出来ませんが
この夜空の周りは星という星で埋め尽くされていました。

星はそれぞれが小さくても、その輝きも、広大さも地上の星（ネオン）とは比べ物にはなりませんでした。
光っているのではなく、輝いているように見えました。

 

 

月明かりの下で旋回する飛行士達はどんな気分なのでしょう。

私達のいる場所からは、飛行機の飛ぶ音だけしか聞こえません。
街の明かりは見えるけれど、喧騒は伝わってこないのです。

 

時折、葡萄畑の中をウサギが走り回る音がする暗闇で、黙って空を眺めているだけですが、
ベテラン飛行士が私達を見つけて（！）近くまで急旋回してちょっと格好良くキメたりして余裕をみせます。
反面、新米パイロットは、もうイッパイ・イッパイなのがそのうちみていると私にも分かってきます。
特に離発着の様子は、もうコメディのよう。
（ごめんね、笑ったりして。）

きっと日本だったら、ウルサイ！近所迷惑な！何時だと思ってるんだ！

と言われる事間違いなしですね。

でも誰も気にしませんし、文句も言いません。
（日本はきっと狭いところに人間がひしめき合い過ぎて、気持ちに余裕がなくなるのでしょうね。
きっと田舎の過疎地辺りなら、そんな音すら風情に感じられたり、夜の静寂が孤独ではないと思われるかも知れません。）

 

不思議な事に、こうして夜の月明かりを散歩しても、怖いとか寂しいとかいう気分はありません。
心地よい孤独感というのでしょうか。
月がやわらかく道を照らしてくれるし、その下の葡萄畑をぼんやりと歩くのも悪くありません。

月明かりと散歩しているような気分になります。
（これはかつてブルゴーニュでも経験した気分と同じです。）

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 

 

 

ライトをつけて車を走らせると、驚いたウサギがあちこち飛び跳ねながら駆け抜けて行きます。
ゆっくり走ると、夏の終わりにはヤマウズラの親子にも遭遇できます。
彼らがあんまりビックリするから、私たちはライトを消して走りました。

 

ライトが無くても平気な位、月明かりは私たちを家路まで照らしてくれるのです。
車の中は、ラジオから楽しい音楽が流れているだけでした。

こんなに心地の良い夜は久し振りだったような気がします。

 

 

 

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　----- おまけ-----

Inatimy さん から教えていただいて早速拝見したところ、あまりにもこの記事で書いた内容とリンクする映像が多くて実際にビックリしました！！
特に風船が夜空に上がっていく景色が、まさに夜間飛行を見ていた状況とおんなじです！
思わず声を上げて見入ってしまいました。
ありがとう！

 

 
よかったら皆さんもご覧になってみてください。
音楽も映像もまさにぴったりでした。

 

 

コメント 19

とってもステキな写真♪
またおじゃましますね。
by Ducca (2007-06-12 19:40) 

ステキな写真とエピソードですね（＾＾）
サハラ砂漠ではこんなに星ってたくさんあるんだと思うくらい小さな星まで見えました。
星って明るいんですよね。
とてもステキな気分にさせてもらいました。
ありがとうございます。
by miffy (2007-06-12 20:22) 

先日行ったヘルゴラントにも小さな飛行場があり、結構頻繁に発着陸してましたが、気になりませんでした。静かなところって、心がゆったりになるんですよね。
by めぎ (2007-06-12 20:32) 

写真も素敵ですが、文章がすばらしく詩的な感じがしました。
大阪の雑多な地域で生まれ育った私にとって
あこがれるような時間の流れですね。
by (2007-06-12 21:17) 

月の明るい夜に私もホタルを見にいこうかな。
by noriko (2007-06-12 21:36) 

いいですね～～～～。私も飛行機の離発着を見るのが好きなので、浜松の
航空自衛隊の基地で、ずっと見ていたことがあるのですが、「あ、今度の、上手」とか、「大丈夫かな、旋回したりして」とか、飽きませんよね。
julliezさんは、星が近い広いフランスの大地でごらんになって、しかも（すてきな人の）解説つき、なんて最高の経験ですね。ｳﾗﾔﾏｼｲ
by TaekoLovesParis (2007-06-12 23:09) 

自然を楽しむには街灯が無い方がいいネ。
でも、暮らすにはちょっと…　(☆∀☆) ﾎｼｶﾞﾏﾌﾞｼｲｸﾗｲ...
by nico (2007-06-12 23:09) 

いい経験をたくさんされてる人達がたくさんいる中にjulliezさんはいるんですね。
すてきな話だ〜。ベテランとヒヨッコの飛行、見てみたいですね（＾＾）
月明かりの中、飛行するのも気持ちいいでしょうね。ベテランさんは。
私の田舎は自衛隊基地があります。授業中ヘリの音とかで、
すごくうるさかったです。全然ロマンティックでもなんでもない・・・。
by どらっち (2007-06-13 01:10) 

同じ空でも、日本とはまた違ってみえるのでしょうねヽ(´▽｀)/
残念ながら名古屋の空はほとんど星がみえません(p_q)
by (2007-06-13 06:27) 

夜が暗いですね～。
我が家の周りも同じ感じです。　野うさぎも、見かけますよ＾＾　
とっても素敵な気分になりました。　ありがとうございます。
by (2007-06-13 07:22) 

そういう場所に何年も身を置いていない者にとって、
記憶を呼び戻してくれました。
でもそれは旅の途中であったりで自分のいつもいるところではない。
甘美な夕暮れの風情に惹かれますね。
by いっぷく (2007-06-13 08:22) 

ウチの上空、いつも通り道なんですよー
かなり低空飛行してるしウルサイから、邪悪モノって感情しかなかったです。
とっても大陸的な考え方ですねー
by nicolas (2007-06-13 15:50) 

素敵な夜ですね。
先月買ったRowwen Heze というオランダのグループの歌
「Droemvlucht」を思い出しました（意味はたぶん、夢の逃避）。
オランダ北部のフリースラント語の歌詞で、とてもきれいな曲。　
この映像が、まさに、こんな月明かりの雰囲気。　
それぞれ、風船のような大きな月を持った、おじさんとお姉さんが、
夜道を照らしながら歩いてるうちに、月に引っ張られるように飛んで、
お互い、出会ってダンスします。
by Inatimy (2007-06-13 18:13) 

みなさま、ご訪問とコメントをありがとうございます。

★ducca sama
どうもはじめまして。
これからも宜しくお願いします♪


★miffy sama
サハラ砂漠で見上げる星空って、さぞかし美しいでしょうね。
星が降ってきそうな・・・って本当にそんな風に思えますよね。
こちらこそありがとうございます。


★めぎさま
結構うるさいはずなのに、その音も一体化してしまうような感じですよね。
日本だったら耐えられないはずなのに・・・。＾＾；


★カフェオランジェさま
雑多な日常から、たまに逃亡してくる分にはいいと思いますよ。
でもきっと雑多な生活の音が恋しくなっちゃうかも。


★てんとうむしさま
コチラにはちょっと変わったコクシネルと蛍がいっぱいいますよ。


★taeko sama
すてきな「人の旦那さま」の解説ですが、いらっしゃったらいつでも連れて行ってくれますよ＾＾


★nico sama
普段の生活で都会がこうだとちょっと困りますね。
田舎はそれで結構成り立ってるのですが、それでも・・・。


★どらっちさま
あー、確かに昼間はやかましいなぁ・・・と私の場合は何度も思いましたが、空を見上げると4～５機位が、縦横無尽に飛びまくっていて、いつの間にか見入っていたりしています。
空が広いからスケールも大きく飛んでいるような気がするのです。
不思議です。


★たろうさま
そうか・・・、星空よりもネオンの方が華やかですか・・・。＾＾


★シンナツさま
そうですか、野うさぎ走っていますか！
京都のお空はどうですか？


★いっぷくさま
あまりにも広大な夕暮れで、それなのに懐かしい気持ちになりました。
人生の一瞬でも、それはきっと幸せを与えてくれそうですよ。


★にこちゃん
確かにジャマモノ・・って、私も家の中にいると思っちゃいます。
修行が足りません・・・。


★Inatimy sama
本当に、ビックリしました！！！！！！
とてもキレイな映像でキレイな曲ですね。
あまりにもリンクする映像が多くて、もう鳥肌モノでした！
どうもありがとうございます。
とっても嬉しかったので張り切って最後に貼り付けました。
by julliez (2007-06-13 23:23) 

素敵なロマンチストさんのお話、楽しかった
それに心に余韻の残る素敵なフォトも感動した
いっぱい、ありがと＾＾
by RangerMaeda (2007-06-14 16:22) 

★Ranger sama
いらしてくださってありがとうございます！
こちらこそどうぞ宜しくお願いしますね。
by julliez (2007-06-14 21:37) 

気に入っていただけて、とてもうれしいです♪　私も大好きな曲です。
このＲｏｗｗｅｎ　Ｈｅｚｅ は６人のおじさんグループ。
「Droemvlucht」で一緒に歌っている女性は、スペシャルゲスト。
名前は、Nynke Laverman で、この歌の作詞もしてます。
本当に、この記事にぴったりですよね。
by Inatimy (2007-06-14 21:43) 

音楽も映像も記事にあっていたので本当に驚きました（＾＾）
julliezさまのブログは読んでいると幸せな気分になりますね☆
by ブルーメン (2007-06-20 02:02) 

ご訪問ありがとうございました。
＞月明かりと散歩
なんて自然でぜいたくでステキなことでしょう！
julliez さんの文章を読んでいるうちに、私も高台の葡萄畑から夜間飛行の飛行機の光が見えるような気がしてきました。
映像も綺麗ですね。
月のような光る風船のやわらかい光がいい感じです。
言葉はわからないものの、とてもゆったりとした気分になれました。
by びっけ (2007-07-01 21:59)