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[ひらめき]最終更新日:12/10/2011

星の王子が見た黄昏 Saint Exupéry [aquitaine bordeaux 地方]

「星の王子さま」 の翻訳著作権が切れたことで日本では新訳本の相次ぐリリースがブレイクしているとか。
実はボルドーワインとも遠からず星の王子は関係があるのです。

ボルドーの中でもとてもエレガントな貴婦人のようなワインが造られるといわれるマルゴー地区で、
グラン・クリュ第3級各付けのワインがそれにあたります。

 

  

Chateau Malescot St-Exupéry (シャトー・マレスコ・サンテグジュペリ)

その昔(1827年)、一時期ですが作者のアントワーヌ・ド・サンテクジュペリの曾祖父のジャン-バプティスト・サンテグジュペリ伯爵
がこの葡萄園(シャトー)を所有していたため、(また、アントワーヌの活躍を称えて?)この名は今も残されているそうです。

そういえば、このシャトーはボルドーのグランクリュクラッセの中ではまだ珍しい(?)減農薬の自然派(リュットレゾネ)です。
同じ地域で堂々の女王に君臨するシャトー・マルゴーに比べると比較的親しみやすさのあるワインで通っています。

 

  

 

ワインにこういうストーリーがあると飲む時に、より楽しみが増えますね。

 

かの「空を飛ぶ作家」が、この地で一族の名前の入ったワインを飲んだのかどうかは分かりませんが
実際に彼らの一族がオーナーだった頃はまだ格付制度そのものが無く、
ただとても素晴らしいワインが出来ると言う事は広く知られていました。

この時代のお金持ちの象徴は、葡萄園を所有する事。
シャトー(葡萄園)の領主である事で、権力争いにも葡萄園の絡んだ歴史話は古今数え切れないほどあります。
トップクラスのワイン葡萄園の領主である事は、格上の貴族であり、また富と力の象徴でもあった訳です。



伯爵亡き後に未亡人のマダムが手放し、その後所有者になったロジェ・ズージエが更に磨きをかけて
1855年のメドック地区等級格付の制定により第3級を獲得した訳です。
まぁそういってしまえば、今更、星の王子さまとの関連性ってどうよ・・って感じですが、
サンテクジュペリ伯爵は他にも幾つかの葡萄園を所有されていたと言うことですから、
ワインとサンテックスは無関係とは言い切らないほうが夢があっていいかも。

 

 
 

ところでサンテックスの代表作「星の王子さま」は子供時代よりもむしろ大人になって手にする方が、
思わせぶりな不思議がいっぱいの本であることには間違いないでしょう。

見る者が様々な思いを心に感じる一冊であるのでは?

 

私にとって非常に興味深く感じている王子さまの行動のひとつ。


それは、操縦士と王子の会話の中で出てくる、
一日に夕暮れを40回(以上)も見た王子の気持ち。

 

夕方が果てしなく遅い夏のフランスでは、じっくりと夕暮れを見に出かける前に、
お腹がいっぱいになっておしゃべりをして眠たくなる・・

或いは
夜明けと共に朝早くから畑仕事に出る私の周りは日が暮れる頃には疲れてもうベッドの中です。
一緒にデスクワークをする仲間も家に帰っちゃっているし。

 

 


 


私が夕暮れをゆっくり楽しめるのは
実はボルドーかコニャックに来ているときだけ。(正確にはブルゴーニュでもそれは可能でした。)

初めてコニャックに来た時以来、
夜間飛行で登場した私の親友の旦那さんが見せてくれる極上の一画で、大空が暮れていく様子を見て
言葉に言い表せない感動をし続けているのです。

どんなワインを飲むよりも、豪華な食事を戴くよりも、感動するのです。
(時と場合と人にもよりますが)

コニャックのとある一画で、180度見渡す限りこの夕暮れがどこからでも位置を変えて見られます。

恐らくは180度以上です。
(360度くるっと見渡せますがここは普通にフランスですから反対方面は藍色の空しかありませんので夕焼けの表情はこちらの180度が最も美しいです)

ご主人は、学生の時から、物思いに耽りたい時や、悩み事がある時、
そして少し孤独になりたい時
ここへ来て日が暮れていく様子を眺めていたのだと言いました。


 


もう、圧巻で言葉が出ないほどです。
心が洗われて行く様な気がしました。

聞こえるのは風の音と鳥のかすかな鳴き声だけです。

自分が、とてもちっぽけな感じがします。
なのに心地いいのです。

自分はちっぽけで何様でも無い事を感じる事が心地いいのです。
私はこの風景を必要としていて、この景色の中にいるのだと感じる心地よさがあります。

 

そこには
傲慢も、疑いも、絶望もありません。

単なる甘美な夕暮れと、それを見て立ち尽くす自分しかありません。

今日の憂いは、やがてこの夕暮れと共に暗闇が飲み込んでしまうようです。

 

  

 

実際にフランスの田舎の朝焼けと夕焼けは喩えようのない美しさと、はかなさがあります。

きっと星の王子様が追いかけた夕暮れの光景も、
たとえ小さな星で椅子の位置を少しずつ変えて44回も夕日を追いかけても
全ての夕暮れは同じ表情ではなかったのではないかと思ってしまいます。


表情を変えながら沈んでいく美しい夕日を追い、王子は何を求めたのでしょう。

 

 

 


夕暮れは美しいけど、美しいものは悲しさを伴っている気もします。
それは、永遠に存在しないから、儚いものは美しくて寂しいのかもしれないですね。



あるフランス人のバラ職人がこう言いました。

薔薇は美しいけれどいつか散ってしまう。
散ることを知っているから人はより愛おしいと思う。
永遠に変わらぬ美しいものは、人はやがて飽きる。
永遠に変わらない(無くならない)としたら、疎ましささえ抱くかもしれない。
造花のようにいつまでも散らない花だとしたら、この瞬間ほど大切には思わないだろう。

理屈こき 詩人でございます。

何か形あるものをつくる人は、それを心に刻んで向き合っていると思います。
生命の耐久時間の差はあれど、いつか無くなるものに丹精込めて命を吹き込むのです。

 

                   

 

 

私はどんなときにいつまでも夕暮れを見ていたいか考えました。

 


どこで?
どんな時?

 

 

 

                         

 


本当に一人で夕暮れを見に行くときは
星の王子さまの気持ちと少し似ているかも知れません。

 

とても甘美で美しくて悲しいまでにきれいな余韻が欲しい時

夕日はあなたにすべてを与えてくれるのです。

 

  

 

 

                                           ************ 

作家サンテグジュペリについての私の思いは、色々あります。
(夫婦揃ってプライベートではどうしようもない自堕落系お気楽貴族であったようですし、
このあたりのゴタゴタ
は、星の王子さまファンは相当ゲンメツしかねないので深く触れるのはやめておきます。)
私は星の王子さまで献辞されているレオン・ヴォルトへ綴られた
「ある人質への手紙(Lettre à Otage)」の一節がきっかけで、この本を再読しました。

実際、「星の王子さま」は妻コンスエロに捧げられるべきだったと、のちにアントワーヌは後悔したという事ですが、
それが本音だとしても、彼自身の気まぐれな性格と、女性問題が複雑に絡み、そうする訳には行かなかったと言う事実背景があります。
まぁ、私は、こういう人間臭さの方に面白みを感じますが。

ちなみに
私の周りでは
Le Petit Prince (星の王子さま)よりも通常子供時代はLe Petit Nicolas を読んでいた方が多いです。
現実的に子供向けなのは、こっちの方である事は間違いなさそうです。


おススメにしたがって、フランス在住の池澤夏樹さんの新訳バージョンで読んでみましたが
解説も含めて、ステキです。
一応、原文の本もありますけど・・・・。(←かなり昔から新品同様です。)

 

星の王子さま

星の王子さま

  • 作者: アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 単行本

 

ある人質への手紙―戦時の記録〈2〉

ある人質への手紙―戦時の記録〈2〉

  • 作者: サン=テグジュペリ
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2001/08
  • メディア: 単行本

 

Le Petit Nicolas

Le Petit Nicolas

  • 作者: Goscinny Sempe
  • 出版社/メーカー: Gallimard
  • 発売日: 1989/06
  • メディア: マスマーケット
 
 

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コメント 20

noriko

夕暮れに空が藍に染まりはじめるなか、西へ向かう家路をのんびり歩くのは儚い切ないひとときですね。

うふふ。
「星の王子様」は、なんだか葡萄組の課題図書みたい。
私の「星の王子様」記事をTBさせていただきまする。
たしかにサン=テグジュペリも"(理屈こき) 詩人"でござりますな。


p.s.そうそう。「プチ・ニコラ」も子供のころに読みました^^
by noriko (2007-06-14 23:17) 

miffy

日本人は朝日が好きな人のほうが多いですけど、私は夕日のほうが好きです。
とてもキレイな夕暮れの写真ですね。
星の王子様というと、どうしても砂漠とバオバブの木を思いだしてしまいます。
サン=テグジュベリの作品だと夜間飛行も読みました・・・
by miffy (2007-06-15 00:14) 

TaekoLovesParis

フランスの平野での夕日は、すてきですね。私は何回か見ただけなのに、いつまでも光景が記憶に残ります。星の王子様に出てくる数字は大きいことが多いので、夕日の40回もそうかな、と思っていたのですが、これはほんとなんですね。julliezさんの夕日の描写を読んでいるとわかります。
by TaekoLovesParis (2007-06-15 00:37) 

julliez

★てんとうむしさま
夕暮れはいいですよ。
でも星の王子さまは葡萄組では人気度低しです。
まぁサンテックスに限らず、フランス人は理屈こきですからね~。
ちなみにバラの件を語っているのはアルザスのバラ園のおじさん。
そっちは妙にナットク。^^


★miffy sama
夕暮れの情緒はいいですよね。
砂漠で見るとざぞ美しい事でしょうね。
バオバブの木は、日独伊を指してるなんて言われますね。
皆さん読みが深い・・・。
夜間飛行も操縦士ならではの目線で綴られたサンテックス描写がいいですね。


★taeko sama
本当に、数字の件はフランス人だな~って感心しますね。
彼らの数字好きは半端じゃありません。
だから数字の信憑性は一番ありそうな気がします。
by julliez (2007-06-15 01:34) 

Inatimy

ちょうど前記事の夜間飛行で、サンテクジュペリのことを思い出していたところでした。 
「星の王子さま」(スペイン語: El Principito) は、スペイン語の朗読テープで、
リスニングの練習に毎晩寝る前に聞いていました。
・・・が、いつも最初の章で、眠ってしまうので、ヘビが飲み込んだゾウしか、印象になく・・・。
日本語では読んだことがないので、今だに、ストーリーがあやふやです・・・。 
懲りずに、今度は、オランダ語で、聴いてみようかな。
by Inatimy (2007-06-15 05:55) 

どらっち

きれいな空〜。
実は、星の王子様、読んだことがない・・・。
けど、イラストは知ってます。なんか、寂しそうな絵だなって。
早速、本屋に行って、子どもにも読ませてみようかな〜。
by どらっち (2007-06-15 06:10) 

toraneko-tora

2枚目・・・・好きな絵です 雲が良いです
by toraneko-tora (2007-06-15 07:44) 

delphy

昔々・・・と言っても、25年前ほどですが、通い詰めてた「葵」と言う
カクテルバーのマスターの話は、いつも星の王子様でした。
私みたいな人生の深さなんてこれっぽっちも分かってない青二才には、
少々難解な話でしたが、一つの下りからの話は、
そのマスターによって、無限に広がりました。
大人の世界の味を、ジンフィズとともに味わっていた頃を想い出しました。
by delphy (2007-06-15 10:21) 

フランスの夕暮れ、きっと素敵なのでしょうね。
一度、生で見てみたいものです。
わたしの夕方から夜の仕事ですから、夕暮れはあまり見れません。
素敵な写真をありがとうございます。
by (2007-06-15 10:41) 

atelier-northern-photo

御訪問ありがとうございます。
ああ、ホント北海道みたい。
フランスと北海道が繋がるなんて凄いです。
by atelier-northern-photo (2007-06-15 11:59) 

シェリー

夕暮れエピソード素敵ですね。
夕焼けから空がキレイなグラデーションになってだんだん深い色になっていく
子供の頃私も公園のアスレチックの上からそれを観るのが好きだったぁ
でも大人になるとなかなか夕暮れ時に外でのんびりすることがなくなって
忘れてましたが~懐かしいいい気分に浸れました~
by シェリー (2007-06-15 12:17) 

julliez

みなさま、コメントにNice! をありがとうございます。


★Inatimy sama
フランス語の朗読はもっと眠くなりますよ~。
羊の絵までは永遠にたどり着けない可能性があります^^;
日本語訳はちょっと微妙で、私は今回新訳で初めて読破したのですが、
やっぱりもう一回(日本語版は)見る事はないと思います。


★どらっちさま
そうなんですよね、あのなんだか中途半端なメルヘン画像が苦手で小さいときは全く興味が無かった私です。
りさぼんちゃんの反応に興味があります^^


★tora sama
ボルドーは大西洋気候なので、夕暮れになると、何と言うか、ちょっとアメリカの西海岸チックな温度変化があるんですよ。
ちょっと湿った感じの風が吹くと日本人的には懐かしさを覚えます。
ただし通常はカラカラに乾燥しています・・・。


★delphy sama
そう、この詩的なフランス文学はまさに難解で理屈っぽいところが満載!
取りようによってどうにでも解釈できるところが大人的に楽しいのではないでしょうか。
でもお酒飲んでる時に、この話ばっかりされるのはちょっと・・・。


★シンナツさま
フランスの夕暮れを生でお見せしたいです・・。
でも京都の雅な夕日も憧れです。


★Rightwill sama
いらして下さってありがとうございます。
北海道に行ったフランス人は絶対に喜ぶんです♪
私も本当によく似ていると思います。
人も景色も食べ物も、素晴らしいですね。


★シェリーさま
ありがとうございます。
夕暮れってとても好きです。
朝日はどうしてもバタバタしながら見る事が多いので、これでリセット!
って感じが好きです。
by julliez (2007-06-15 16:22) 

Ducca

なんだかフランスに行きたくなっちゃいますね。
その夕日を実際見てみたくなりました。

星の王子様はちゃんと読んだ事がありません。
小学生の時読んでみたのですが、なんだか子供向けの本に
しては難しくかわいいイラストに似合わず、哲学的だったと覚えてます。
また読んでみようかな。
今度はきっとなにか見つけられるような気がします。
by Ducca (2007-06-15 16:34) 

wakatate

星の王子さまと、ワインの話は楽しいですね
さまざまな空の写真が綺麗で夢のようですね。
by wakatate (2007-06-15 17:55) 

うゎ~。
綺麗な夕焼けの写真がいっぱいですね。
私も夕暮れ時は、大好きです。
1日のうちの、ほんの数分・詩人になれそうな瞬間ですよね。
「一日に夕暮れを40回(以上)も見た王子の気持ち・・・」
同感です。
by (2007-06-16 13:35) 

nicolas

まさに、この記事の内容ですよね、星の王子さま。
そしてバラ職人の見習いである私も、同じような「理屈こき」な
脳みそ装備されています(笑)
造花はキライ。
キモチが入れ込めないから。
「刹那」っていう、綿々たる繋がりが、人生って思ってるから。
「同意」されない「造花」はそばに置きたくない・・・

空、雲の表情も、同じようでいても もうこの時と決して同じくならないんですよね。
by nicolas (2007-06-16 15:17) 

julliez

★Ducca sama
本当、きっと今読んだ方が何か感じる事が出来るかも知れない本です。
そんなに長くないので一度読んでみるのも悪くないですよ。


★りんりんさま
影の長くなる夕暮れって、いいですね。
これからの季節の夕暮れは好きです♪


★にこちゃん
私も造花はダメですね。
粗末にしちゃう。
その一瞬の命の輝きが美しいですね。
by julliez (2007-06-17 00:08) 

newyork

夕焼けが本当に素敵。こういう所に住みたくなってきた、今日この頃です。うらやましいです。都会生活は色々楽しいこともあるけれど、疲れる時もありますね。NYでは、夏にハドソン川の上に焼けるような夕焼けを見ることができます!それもまた素敵です。
by newyork (2007-06-17 02:22) 

いっぷく

サンテグジュペリにちなんだ風景を飛行船で空から見るという映像を
だいぶ前に見たことあります。南フランスを空から俯瞰していくのですが
あまりにも美しい風景にあこがれました。
特に夕暮れの空の色の変化は感動的ですね。
by いっぷく (2007-06-17 06:19) 

luna

星の王子さま、
日本語で読んでも、フランス語で読んでも、
すきな作品です。
王子さまと薔薇の関係に、いつも魅力を感じます。
「とても甘美で美しくて悲しいまでにきれいな余韻が欲しい時
夕日はあなたにすべてを与えてくれるのです。」
とてもうつくしいことばですね。
by luna (2007-06-17 16:13) 

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